日本に在留している外国人が、少しの期間だけ自分の国に帰国したり、他の国に旅行したりするというケースがあると思います。
日本に再入国する予定がある場合は、「再入国許可」または「みなし再入国許可」を受けておく必要があります。
もしそれらの許可を受けずに出国してしまうと、日本に再入国する時の手続きが大変になります。
具体的には、その外国人が持っていた在留資格や在留期間は消滅してしまいます。
すなわち、日本に再入国するためには、もう一度新たに「査証(VISA)」を取得して入国手続きをする必要があるのです。
特に「永住者」や「永住者の配偶者」の在留資格を取得した人は、許可の受け忘れに注意が必要です。苦労して取得したそれらの在留資格を失ってしまう可能性があるからです。
また、「みなし再入国許可」の許可を受けていても、うっかり1年を超えて出国してしまった場合は、同じように在留資格を失ってしまう可能性があります。
したがって「永住者」や「永住者の配偶者」の在留資格を取得した人は、出国後にふたたび日本に再入国する予定がある場合は、有効期間の長い「再入国許可」を受けておくことを強くお勧めします。
以前は、一時帰国の為の申請としては「再入国許可」のみでした。
その申請の為だけに、出国日前にわざわざ入国管理局等に行き、申請して許可を受けておく必要がありました。
しかし2012年に新しい在留管理制度が始まり、出国日当日に空港等で書類にチェックして申請するだけの「みなし再入国許可」の制度が始まりました。
出国の期間が明らかであり、1年を超えないことが確実な場合は、申請が簡易である「みなし再入国許可」を取得すれば良いと思います。
逆に出国の期間が未定であったり、1年を超える可能性がある場合は、「再入国許可」を取得しておいた方が良いでしょう。
この記事では「再入国許可」と「みなし再入国許可」の違い、それぞれの申請方法について、解説します。
再入国許可とは?
「再入国許可」とは、日本に在留する外国人が一時的に日本から出国し、再び日本に入国しようとする時に、入国手続を簡略化するために法務大臣が与える許可です。
「再入国許可」で再び日本に入国した場合は、出国前の「在留資格」及び「在留期間」が継続しているものとみなされます。
(※)申請可能者は下記となります。
1 申請人本人(日本での在留を希望している外国人本人)
2 地方出入国在留管理局長から申請取次の承認を受けている次の者で、申請人から依頼を受けたもの
(1)申請人が経営している機関又は雇用されている機関の職員
(2)申請人が研修又は教育を受けている機関の職員
(3)外国人が行う技能,技術又は知識を修得する活動の監理を行う団体
(4)外国人の円滑な受入れを図ることを目的とする公益法人の職員
(5)旅行業者
3 地方出入国在留管理局長に届け出た弁護士又は行政書士で、申請人から依頼を受けたもの
4 申請人本人の法定代理人
5 申請人本人が16歳未満の場合又は疾病(注1)その他の事由により自ら出頭することができない場合(注2)には、その親族又は同居者若しくはこれに準ずる者(注3)で地方出入国在留管理局長が適当と認めるもの
(注1)「疾病」の場合,資料として診断書等が必要。
(注2)理由書(任意様式)等が必要。
(注3)申請人との関係を証明する資料(住民票等)が必要。
(※)審査基準は下記となります。
・現に収容令書の発付を受けている者でないこと。
・その他再入国許可することが適当でないと認められる者でないこと。
(※)有効期間は5年(特別永住者は6年)です。申請者本人の在留資格の期限を超えることはできません。
(※)再入国許可の種類は2種類あります。
シングル:一回限りの再入国許可(手数料は,3000円)
マルチ:有効期間内であれば何回でも出入国が可能(手数料は6,000円)
(※)再入国許可の有効期間について、延長の申請が可能です。
再入国許可を受けて日本国外へ出国した外国人が、出国先で病気や天災等のようなやむを得ない事情で有効期間内に日本へ再入国できない場合は、出国先の在外公館で有効期間の延長を申請することができます。
延長できる期間は1年を超えることはできません。そして、当初の再入国許可の効力が発生した日から6年(特別永住者の場合は7年)を超えることはできません。
また、出国前の日本で持っていた在留資格の在留期限を超える延長はできません。
(※)申請時は、問題が無ければ申請したその日に許可を受けることができます。
(※)申請のための必要書類は下記となります。
・再入国許可申請書
・有効な旅券(パスポート)
・在留カード(特別永住者の場合は特別永住者証明書)
・手数料
再入国許可の申請方法
「再入国許可申請書」を日本から出国する前に、住んでいる場所を管轄する地方入国管理局・支局・出張所等に行って申請する必要があります。
後述する「みなし再入国許可」は出国時に空港などで申請できますが、「再入国許可」は出国日前に申請しておく必要があります。その為、余裕を持って事前に申請しておく必要があります。
申請後、問題が無ければ申請したその日に許可を受けることができます。
フォーマットは下記を参考にして下さい。
(出典:出入国在留管理庁 2021年4月20日現在の書式です)
申請する入国管理局の名称を記入してください。
・例:大阪
申請者(再入国許可を取得する外国人)の国や地域を記入してください。
・例:インドネシア
申請者(再入国許可を取得する外国人)の生年月日を記入してください。
・例:1998年10月15日
申請者(再入国許可を取得する外国人)の旅券に記載されている氏名を記入してください。
・例:Mu〇〇〇〇〇〇 Al〇〇
(※)中国人など、漢字圏の人は漢字の名前とローマ字の名前の両方を記入してください。
申請者(再入国許可を取得する外国人)の性別に〇を記入してください。
・例:男性の場合は、「男」の方に〇を記入
申請者(再入国許可を取得する外国人)が日本で住んでいる住所を記入してください。
住所は住民票に記載された住所をそのまま記入します。
・例:大阪府大阪市〇〇〇〇〇〇
申請者(再入国許可を取得する外国人)の自宅の電話番号と携帯の電話番号を記入します。自宅の電話番号が無ければ、携帯の電話番号だけを記入してください。
・例:06-〇〇〇〇-〇〇〇〇(自宅の電話番号)
・例:090-〇〇〇〇-〇〇〇〇(携帯の電話番号)
申請者(再入国許可を取得する外国人)が所持している旅券の番号を記入します。
・例:AE〇〇〇〇〇〇
申請者(再入国許可を取得する外国人)が所持している旅券の有効期限を記入します。
・例:2021年10月21日
申請者(再入国許可を取得する外国人)の在留資格を記入します。
・例:特定技能
申請者(再入国許可を取得する外国人)の在留期間を記入します。
・例:3年
申請者(再入国許可を取得する外国人)の在留期間の満了日を記入します。
・例:2021年12月20日
申請者(再入国許可を取得する外国人)の在留カード番号を記入。特別永住者の方は、特別永住者証明書の番号を記入します。
・例:AE〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
申請者(再入国許可を取得する外国人)が日本から一時的に出国する理由で、該当するチェック欄にチェックします。
該当しない場合は、「その他」の欄にチェックし、詳細を記入してください。
・例:商用の目的で出国する場合は、□ 商用をチェックする
申請者(再入国許可を取得する外国人)が、日本を出国して渡航する国を記入します。
・例:ベトナム
申請者(再入国許可を取得する外国人)が、日本を出国する予定日と出国場所(空港や港の名称)を記入します。
・例:2021年8月10日、関西国際空港
申請者(再入国許可を取得する外国人)が、日本に再入国する予定日と入国場所(空港や港の名称)を記入します。
・例:2022年3月15日、関西国際空港
申請者(再入国許可を取得する外国人)の出国する予定が1回だけの予定であり、許可も1回だけの再入国許可で良ければ、□ 1回限りの再入国許可をチェック。(費用は3,000円)
複数回の日本からの出国と再入国の予定があれば、□ 数次の再入国許可をチェック。(費用は6,000円)
いずれかをチェックしてください。
申請者(再入国許可を取得する外国人)が、日本と海外の双方において、犯罪での処分歴が無ければ「無」を〇します。
犯罪での処分歴がある場合は「有」に〇をして、詳細な犯罪内容を記入します。
申請者(再入国許可を取得する外国人)が、判決が確定している刑事裁判を受けた経歴がなければ「無」を〇します。
判決が確定している刑事裁判を受けた経歴がある場合は「有」に〇をして、具体的な裁判内容を記入します。
殆どの外国人の人は該当しないので、この欄は空白になります。
旅券を取得することができない場合という理由で、日本に在留している外国人は下記のケースがあります。
・旅券を持っていない人や、無国籍の人。
・日本が承認していない国や地域の外国人が、日本に来日している場合。
(このような場合は日本大使館で「渡航証明書」の発行を受けて来日します。この渡航証明書は旅券には該当しません。)
申請者(再入国許可を取得する外国人)の代わりに、下記のような法定代理人が代理で申請する場合は、法定代理人の情報を記入します。
・親権者
申請者が20歳未満の場合、本人に代わって身分上及び財産上の監督保護・教育を内容とする権利義務を有する方です。
・未成年後見人
申請者が20歳未満の場合で、親権者がいないとき、又は、親権者が管理権(財産に関する権限)を有しないときに後見となる方です。
・成年後見人
申請者が成年被後見人の場合で、本人に代わって法律行為を行う方、又は本人による法律行為を補助する方です。
法定代理人の氏名を記入します。
法定代理人と申請者(再入国許可を取得する外国人)との関係を記入します。
・例:親権者(法定代理人が申請者の親権者である場合など)
法定代理人の住所、電話番号、携帯電話番号を記入します。
申請者(再入国許可を取得する外国人)である本人か、申請者の法定代理人のどちらかになります。必ず直筆で署名し、直筆で書類を作成した日を記入してください。
この「再入国許可」の書類を作成した後、申請するまでの間に記載内容に変更があった場合は、申請者(法定代理人の場合は法定代理人)が変更箇所について訂正し、署名すること。
このような注意事項になります。
みなし再入国許可とは?
「みなし再入国許可」とは、日本で「在留資格」と「有効な旅券」を持っている外国人が、日本を出国する日から1年以内に日本に再入国する場合には、原則として通常の「再入国許可」の取得が不要となる許可のことです。
(※)「3ヶ月以下」の在留期間を決定された方及び「短期滞在」の在留資格で在留する方は、「みなし再入国許可」の対象外です。再入国する場合は、新たに査証(VISA)を受けて入国することになります。
(※)申請可能者は、申請者本人のみとなります。
(※)審査基準として、下記に該当する外国人については,みなし再入国許可の対象とならないため,通常の再入国許可を取得する必要です。
・在留資格取消手続中の者
・出国確認の留保対象者
・収容令書の発付を受けている者
・難民認定申請中の「特定活動」の在留資格をもって在留する者
・日本国の利益又は公安を害する行為を行うおそれがあることその他の出入国の公正な管理のため、再入国の許可を要すると認めるに足りる相当の理由があるとして法務大臣が認定する者。
(※)有効期限は在留期限を超えることはできず、在留期限の範囲内で最長「1年」、特別永住者の場合は最長「2年」となります。
(※)「みなし再入国許可」の有効期間は延長することができません。1年以内に日本に入国しない場合は、在留資格が消滅してしまうので注意が必要です。1年を超えて日本以外の海外に滞在する予定の場合は、必ず「再入国許可」を取得して出国してください。
(※)申請時としては、出国手続き時に書類にチェックして提出し、問題が無ければそのまま許可を受けることができます。
(※)「有効な旅券」と「在留カード(特別永住者の場合は特別永住者証明書)」が申請時に必要です。
・特別永住者の方も「みなし再入国許可」の対象となります。
・特別永住者の方の「みなし再入国許可」の有効期間は、出国の日から2年間となります。
みなし再入国許可の申請方法
「みなし再入国許可」によって出国する場合には、「有効な旅券」と「在留カード(特別永住者の場合は特別永住者証明書)」を用意し、出国手続き時に入国審査官に対して「みなし再入国許可」による出国を希望することを伝える必要があります。
具体的には、再入国出入国記録(EDカード)に一時的な出国であり、再入国する予定であることのチェック欄にチェックします。
そして入国審査官に提示し、「みなし再入国許可」による出国を希望することを伝えてください。
チェックする箇所は下記を参考にして下さい。
(出典:出入国在留管理庁 2021年4月20日現在の書式です)
入国管理局の再入国出入国記録フォーマットのサイトはこちら(各国語の翻訳版もあります)
出国がどれくらいの期間を予定しているかについて、いずれかをチェックします。
・□1年以内(例:7ヶ月の予定)
・□1年超2年以内(例:1年3ヶ月の予定)
・□2年超(例:3年4ヶ月の予定)
「みなし再入国許可」を受ける為には、必ずこの「一時的な出国であり、再入国する予定です。」のチェック欄をチェックしてください。
チェックを忘れて提出してしまうと、「在留資格」と「在留期間」が消滅する可能性があります。
このチェック欄は少し意味が分かりにくいですが、「再入国許可」を受けているにもかかわらず、その「再入国許可」の有効期間内に日本に入国する予定がない人がチェックします。
上記①、②、③のいずれもチェックが不要なケースは、日本に再入国する予定がない外国人で、かつ「再入国許可」を受けていない人です。
わざわざ③のチェック欄がある理由ですが、中長期在留者の外国人は住民基本台帳制度の対象となっているため、「再入国許可」を受けているが、再入国の予定は無いということを事務処理上登録しておく目的の為です。
まとめ
外国人が一時帰国する時の申請「再入国許可」と「みなし再入国許可」の違い、申請方法についての記事でしたが、いかがでしたでしょうか。
出国の期間が明らかであり、1年を超えないことが確実な場合は、申請が簡易である「みなし再入国許可」を取得すれば良いと思います。
しかし出国の期間が未定であるような場合、もしかすると1年以上の長期になる可能性がある場合は、有効期間が長い「再入国許可」を必ず取得しておくべきです。
うっかり申請を忘れていたり、申請方法のミスで、せっかく取得していた「在留資格」や「在留期間」を失わないように注意してください。